この作品の核となっているおとぎ話「埋められた月」を連載しています。
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埋められた月 (9)
そして、男は行ってしまった。疲れてあえぎながら、よろめき嬉し泣きしながら、恐ろしい沼から命からがら逃げ出した。そのときになって月は、あいつにここから連れ出してもらいたかったことを思い出した。彼女は気が狂ったように懸命に手を引き抜こうとしたが、やがてもがくのにも疲れ果て、古木の根元に膝をついた。そして、彼女がそこに伏して息を切らしているうちに、黒いずきんが彼女の頭にかぶさってしまった。恵みの光は消え失せ、闇が戻ってきた。金切り声やうなり声をあげた化け物どもをみんな引き連れてね。そいつらは彼女をぐるりと取り囲み、あざけるわ、掴みかかるわ、打ち据えるわ。怒りやら恨みやらで金切り声をあげるわ、ののしり声だのうなり声だのをあげるわ。やつらは、
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これまでの話
(1)~(8)。