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第二話 p.14

第二話 p.14 published on

この作品の核となっているおとぎ話「埋められた月」を連載しています。


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埋められた月 (8)
男の方はというと、再び光を見ることができたものだからもう嬉し泣きだった。化け物どもはすぐさま暗い隅っこへ逃げ込んだ。やつらは光に耐えられないからね。そんなわけで、男は自分がどこにいるか、道がどこにあるか、どうすれば沼から抜け出せるかを知ることができた。ところがこいつは、あまりに急いで沼地に潜む生き物やら小鬼やら化け物から逃げだそうとしたものだから、この頼もしい光が、黄色く輝く美しい髪から黒い外套の外へ流れ出し、自分の足元の水辺にまでやって来たなんてことは、てんで見ちゃいなかった。そして月自身も、そいつを救おうとするのに必死だったから、そいつがちゃんと道に戻れたのに嬉しくなってしまい、自分も助けが必要なことや、自分が黒い古木にがっしり囚われていることなんてすっかり忘れちまってた。(つづく)
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